レリックランナー

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レリックランナー第17話:塔の建設者

記録とは、支配か。記録とは、信頼か。記録とは、救済か。それとも——ただの“忘れたくないという願い”か。最初の塔を建てた者たちは、なぜ“声”を刻もうとしたのか。◆ 第一節:第0塔——起源の地へ霧が晴れた先に、その場所はあった。かつて「思想塔・...
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レリックランナー第16話:思想塔・崩壊連鎖

崩れるのは、塔だけではなかった。人々の信仰、記憶、信念。この世界を形づくっていた“価値”の骨組みが、ひとつ、またひとつと、崩れはじめていた。◆ 第一節:緊急報告「カイ。リューカ……悪い知らせだ」ヴァルド支部長の声は、いつになく深刻だった。彼...
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レリックランナー第15話:価値なき神

この世界には、正しさが多すぎる。誰もが、自分の信じる“価値”を掲げ、誰かを否定する。ならば、すべての価値を無くせばいい。すべてが“等しい”なら、争いは起きない。それはあまりに純粋で、あまりに破壊的な思想だった。◆ 第一節:白衣の男第3塔の崩...
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レリックランナー第14話:破られた封印

価値とは、希望だけではない。誰かを救う価値は、誰かを裁く。優しさの裏に、排除があり。正義の影に、暴力がある。それでも、人は価値を捨てられない。◆ 第一節:塔の警報《イーリム支部》に非常警報が鳴り響いたのは、深夜だった。「カイ! リューカ! ...
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レリックランナー第13話:セレスティア決議

正しさとは、数で決まるのか。正しさとは、声の大きさで決まるのか。それとも、誰かが泣いた数で決まるのか。セレスティアが下した“決議”は、そのすべてを踏みにじるほどに、“整っていた”。◆ 第一節:会議の招集白金の階段を、黒衣の者たちが昇っていく...
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レリックランナー第12話:塔を喰らう者

価値が揺れる。想いが削れる。言葉が消える。それは、“否定”ではない。ただひたすらに、“空白”にする力だった。塔を喰らう者が現れたとき、世界の声は、ひとつ、またひとつと消えていった。◆ 第一節:崩落する塔の報せそれは突然のことだった。「……塔...
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レリックランナー第11話:帰らざるランナー

彼らは何を運び、どこへ向かったのか。“帰らざるランナー”と呼ばれる者たちは、記録にも記憶にも残らない。だが、確かにそこに“価値”があった。声なきままに消えた意思が、今、風に揺れている。◆ 第一節:霧の海路その島は、海図にも記されていなかった...
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レリックランナー第10話:声を奪う街

人は、声を持って生まれる。泣き、笑い、叫び、訴え——けれどそれを奪われたとき、人は果たして人でいられるのか。言葉を失った街で、カイは“声”の本当の意味に直面する。◆ 第一節:リスフォニアの沈黙「……なんだ、ここ……」リスフォニアの街に足を踏...
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レリックランナー第9話:凍結された思想

思想もまた、凍る。痛みを恐れ、失敗を悔やみ、もう二度と傷つかぬように——人は、自分の“価値”を氷の中へと閉じ込める。けれどその中で、確かに“心”は、生きようとしていた。◆ 第一節:極寒の地・ノルディカ「寒っ……!」カイは分厚い外套をかき寄せ...
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レリックランナー第8話:記憶の海に潜る者

水は記憶を封じ込める。人が流した涙も、語られなかった言葉も、すべてが、静かに底へ沈んでいく。そして、そこに眠るのは——“忘れたくない記憶”。◆ 第一節:アムニシアへの航路「アムニシアへ行く?」ヴァルド支部長は、いつになく真剣な顔で尋ねてきた...