レリックランナー 第1話:声の欠片

レリックランナー

※この小説は原案・設定を私が担当し、AIによって執筆しています。

◆ 序章:沈黙の海と「記録の霧」

それは、世界の端。
地図の外、海と空が交わる場所に、誰も近づかない“霧”があった。

——記録の霧(レコードミスト)。

世界中の人間が、口を揃えて「行ってはならない」と言う。
その霧の中には、“過去の記憶”が蠢いているからだ。

とある研究者はこう言った。
「霧は、“世界が忘れたいと思った記憶”を飲み込んだ残滓だ」と。

そして今、その霧の中から、ひとつの影がこちらへと近づいていた。


◆ 第一節:兄の背中

「お前も、いずれ“それ”を運ぶ日が来る」

5年前、兄はそう言って旅に出た。

少年の名前は——カイ・オルステッド
海辺の小さな村《マーレス》で育った、15歳の少年だ。

目の前に立っていた兄、ジン・オルステッドは、世界を巡る《レリックランナー》だった。

レリックランナー——
それは、「価値を持つもの」を人から人へと運ぶ者たちの総称である。
ただの配達人ではない。
彼らが扱うのは“レリック”と呼ばれる、特殊な共鳴物質。

古代の文明——ゼロ・アークが遺した不思議な道具たちは、
ただの道具ではなく、「人の価値観」に反応して、さまざまな力を発現する。

炎を生む指輪。
記憶を写す鏡。
心を読む仮面。

レリックは、それを持つ者の信念・記憶・思考と“共鳴”することで、形を変える。

ジンはその中でも、特別なものを運んでいた。
それが、誰も知らない「13番目の思想塔」にまつわるレリック——

…だったのだと、カイが知ったのは、つい昨日のことだった。


◆ 第二節:認定式と旅立ち

朝の陽光が港を照らしている。
風が白い帆を揺らし、遠くでカモメが鳴く。

「よう、カイ! 晴れてランナー認定か!」

村の広場で、村長と老技師ナグが笑顔で彼を迎えた。

「やあ。これから初任務だよ」

「心して運べよ。これはお前の兄が——」

「……兄貴が、最後に運んでいたレリックだって話だろ?」

カイは、箱を受け取る。
小さな、木の箱。重さはほとんどない。
しかし、箱の内側から微かな“ささやき”が聞こえる気がする。

「……かい……お前に、託す……」

カイは息を呑んだ。

「聞こえたか? 声が」

ナグが頷く。

「そいつは《声の欠片(フォノスフレイク)》と呼ばれるレリック。
 持ち主の“言葉”や“想い”を、時間と空間を超えて運ぶ代物だ。
 ジンが遺した唯一の痕跡よ」

「兄貴は……この声を、誰に届けようとしてたんだ?」

ナグは首を横に振る。

「それは、今となっては分からん。だが——お前がそれを聞いたなら、もう運ぶ資格がある」


◆ 第三節:記録の霧と幻影

帆船に乗ったカイは、木箱を抱えて、しばし海を眺める。

船の航路上には“記録の霧”が立ちこめ始めていた。
地図にも記されない、灰色のもや。

霧の中に入った瞬間——

世界が、ねじれた。

音が遠のき、目の前に——“ジンの幻影”が現れた。

「兄貴……?!」

「カイ……お前は、まだ何も知らない」
「価値とは、簡単に壊れる。人の想いは、時に人を殺す」
「それでも運ぶのか?」

言葉は、霧の中に溶けていく。
カイの胸の中の“声の欠片”が淡く光った。
それとともに、兄の姿もふっと消える。

霧が晴れ、船は無事にイーリムの港へ到着した。
だが、カイの中にはひとつの確信が芽生えていた。

「あれは……レリックが“記録”した兄貴の声だ。
 なら、兄貴の“記憶”はまだ、どこかに残っている」


◆ 第四節:少女との出会い

港町イーリムは、活気にあふれていた。
だが、人々の口からは、気になる噂が飛び交う。

「思想塔のひとつが開いたらしいぞ」
「セレスティアが動いてる。価値観を一つに統一するとか言って……」

そのとき。
人混みの中で、フードを被った少女が、カイに近づいた。

「あなた。背負ってるそれ——“声の欠片”ね」

驚いて振り返ると、少女はじっと見つめていた。

名は——リューカ・モーラ

年齢はカイより一つ上ほど。
その瞳は鋭く、感情を押し殺した冷たさがあった。

「あなたは、選ばれたのよ。運ぶ者として」
「なら、警告しておくわ。“価値観”を運ぶということは、誰かの命を重さに変えることになる」

そう言って、彼女の手に浮かんだ装置——《カリオンコード》。
まるで神経回路のような模様が、手の甲に光っていた。

「待って……! 兄貴のこと、知ってるのか?」

「ええ。ジン・オルステッド。彼は“第13の思想塔”の座標を最後に記録した……存在しないはずの塔よ」

カイは言葉を失った。

「——この世界には、まだ“誰にも知られていない価値”があるの」

「それを見つけるか、それとも、塗り潰されるか」

少女はそう告げて、霧のように去っていった。


◆ 終章:選ばれし者

夜。
カイは港の高台で“声の欠片”を見つめていた。

「運ぶよ、兄貴。
 俺は、この声を——この想いを、ちゃんと届ける」
「それが、レリックランナーの仕事だから」

空には十三番目の星が、ひときわ明るく輝いていた。


◆ 次回予告:第2話「価値の測り方」

港町イーリムで巻き起こるレリック強奪事件。
リューカの分析と、カイの“初めての選択”が、物語を大きく動かす。

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